このような症状で
お困りですか?
TROUBLE
潰瘍性大腸炎の主な症状としては、排便の回数がふえ、 下痢、血便、腹痛、微熱などがみられます。重症化すると、体重減少、貧血(立ちくらみ、動くと息切れする、頭痛、疲れやすい)、37.5℃以上の発熱が続く、 などがあります。排便のコントロールが難しくなる、下着に便が付着する(便がもれる)など、排便に関する変化がみられることもあります。
また、大腸以外の合併症として、関節炎(関節を曲げると痛む)、虹彩炎(白目の充血がなかなかおさまらない、眼の痛みが続く)、皮膚症状などがみられることがあります。
こうした症状にお悩みの方は、潰瘍性大腸炎の可能性があります。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは、大腸の一番内側の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍(粘膜の一部が深く傷つき、えぐれてしまった状態)ができる病気です。よく似た症状がみられる病気にクローン病があり、潰瘍性大腸炎とあわせて「炎症性腸疾患(IBD)」と呼ばれています。
クローン病との大きな違いは、潰瘍ができる部位の違いです。クローン病は、口から肛門までのすべての消化管で起こりえるあるのに対し、潰瘍性大腸炎は大腸だけに炎症ができます。尚、潰瘍性大腸炎、クローン病ともに難病に指定されています。潰瘍性大腸炎による病変は、直腸から連続的に口側(上行性)に広がる性質があり、最大で大腸全体に広がります。
潰瘍性大腸炎になる原因は、遺伝的な要因に、食生活やストレスなどの環境が関係していると考えられていますが、まだはっきりとは分かっていません。そのため、炎症を抑える治療法はありますが、根本的な治療法はも見つかっておらず、長くつきあっていく病気の一つです。長い経過の間には、寛解(症状が良くなること)と再燃(症状が悪くなること)をくり返します方もいます。
日本は1990年以降、急激に増え潰瘍性大腸炎の患者さんがおよそ20万人(米国に次いで世界で2番目に多い)います。30歳以下の成人に多い病気ですが、小児の頃に発症する人や、高齢になってから発症する人もいます。潰瘍性大腸炎は長くつきあっていく病気であり、近年では患者さんの年齢層も高齢化する傾向にあります。
潰瘍性大腸炎の
診断方法
METHOD
潰瘍性大腸炎を疑う症状がみられる場合、まずは血液検査を行い、炎症の程度や貧血になっていないかなどを調べます。また、血便や下痢を起こす他の病気(感染性の胃腸炎など)と区別することも必要です。潰瘍性大腸炎であるかどうかを診断するためは、大腸カメラによる検査が有効です。
大腸カメラによって大腸の内側をしっかりと観察することで、粘膜の炎症の強さや拡がりが分かります。重症度の判断や、似た様な症状がみられる大腸の他の病気と区別することもできます。場合によっては、組織の一部を取り(生検)、顕微鏡で詳しく調べることもあります。
2020年に公表された潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 (厚生労働省 難治性炎症性腸管障害に関する研究班)によると、潰瘍性大腸炎は、炎症の拡がり方で大きく4つに分けられます。
- 全大腸炎(炎症が大腸全体に広がっているもの)
- 左側大腸炎(炎症が直腸からS状結腸、下行結腸までにとどまるもの)
- 直腸炎(炎症が直腸に限局しているもの)
- 右側あるいは区域性大腸炎(特殊なタイプ)
潰瘍性大腸炎であることが分かったら、定期的に大腸カメラによる検査を行うことが大切です。とくに全大腸炎型の場合は、病気を発症してから7年以上経過するとがん化する可能性が高くなりますので、1~2年に1回は大腸カメラの検査を受けましょう。
潰瘍性大腸炎の治療方法
潰瘍性大腸炎の治療法には、内科的な治療と外科的な治療があります。原因がまだ不明のため根本的治療法は確立されていませんが、大腸の炎症を抑える有効な治療法は存在します。大腸粘膜の炎症を速やかに抑え、長期的に症状をコントロールすることが大切です。
現在は以前に比べ多くの治療薬が開発され、たくさんの方が長期的に寛解維持出来るようになってきました。しかし一部の治療効果が不十分な方やがんを合併した方には外科的な治療(全大腸摘出術)が必要になってきます。
5-ASA製剤 | 潰瘍性大腸炎に使われる中心的なお薬です。飲み薬や、直腸から投与するお薬があり、炎症を抑えることで、下痢や腹痛などの症状を減らすことが期待できます。軽症から中等症の潰瘍性大腸炎の方に有効で、寛解期の再燃予防にも効果があります。 |
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副腎皮質ステロイド薬 | 炎症を強力に抑える効果があり、中等症から重症の患者さんに用います。しかし、再燃を予防する効果はありません。飲み薬、直腸から投与するお薬、点滴投与などがあります。 |
免疫調節薬(免疫抑制薬) | ステロイド薬を中止すると症状が悪化する患者さんや、ステロイド薬で十分な効果が得られない患者さんに使われます。 |
血球成分除去療法 | 薬物治療ではありませんが、血液中から、炎症により異常に活性化した白血球を取り除く治療法です。ステロイド薬で効果が得られない活動期の患者さんに行います。 |
生物学的製剤 | 炎症性サイトカインをターゲットにした治療法で、難治性の患者さんに使用します。 |
低分子化合物 | 炎症性サイトカインのシグナル伝達に作用する内服薬で、中等症から重症の患者さんに使用します。 |
現在は以前に比べ多くの治療薬が開発され、たくさんの方が長期的に寛解維持出来るようになってきました。しかし一部の治療効果が不十分な方やがんを合併した方には外科的な治療(全大腸摘出術)が必要になってきます。比較的若い患者さんが多いため、入試、入学、就職、結婚、妊娠、出産など人生の節目を迎えることが多いです。そのため、患者さんの病状だけでなく、その背景も考慮し、患者さん一人一人に寄り添った治療を心掛けています。